
猿九の物語 —— 関市の職業刀匠・猿渡俊昭
日本関市の刀剣伝統
日本の包丁といえば、岐阜県関市が必ず語られます。関市は古くから刀剣や包丁の産地として知られ、数百年にわたり受け継がれてきた鍛造技術によって、世界三大刃物産地のひとつに数えられています。今日でも関市の包丁は、料理人からコレクターまで幅広く支持されています。
その地で生まれ育った職業刀匠・猿渡俊昭は、自身のブランド「猿九(Saruku)」を立ち上げ、伝統を守りながら現代的な素材と技術を融合させることで、独自の作品を生み出しています。
二つの顔を持つ刀匠
猿渡俊昭は、職業刀匠であると同時に、釣りインストラクターやインフルエンサーとしても活動しています。また、世界的に著名なカスタムナイフ作家 松田菊男氏の親しい友人としても知られ、互いに影響を与え合う存在です。
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工房では鋼と火を相手に、切れ味と耐久性を追求。
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自然の中では人と道具の関係を観察し、日常に寄り添う視点を作品に反映。
この二つの顔、そして友情のつながりが融合することで、彼の包丁はプロの料理人にとっても、日常使いする人々にとっても理想的な一本となっています。
SPG2鋼とダマスカス模様
「猿九」の代表作には、芯材にSPG2粉末鋼を用いたものが多くあります。SPG2は高硬度で長切れするうえ、耐食性にも優れ、日常の調理に非常に適した鋼材です。さらに外層にはダマスカス多層鋼を採用し、強度や靭性を高めつつ、美しい波紋模様を浮かび上がらせています。一本ごとに異なる文様は、まさに実用と芸術の融合です。
手仕事とディテールへのこだわり
猿渡俊昭は、一本一本を手研ぎ・手調整することにこだわります。
刃先は鋭く、スムーズな切れ味。
ハンドルはアイアンウッドなどの緻密な木材を使用し、手にしっとり馴染む。
刀身と柄のバランスは絶妙で、長時間の使用でも疲れにくい。
細部に宿る職人の精神が、「猿九」の包丁を唯一無二の存在へと昇華させています。
包丁を超えたストーリー
SNSを通じて釣りや料理、制作の様子を発信し、包丁を“道具”以上の存在として伝える猿渡俊昭。彼の哲学はこうです。
「良い包丁は、切るための道具ではなく、生活と文化をつなぐ架け橋である。」